バレンタインと小さなさいふ
中学の修学旅行のおみやげを部活の後輩の女の子に頼まれたので、私は長崎の宿舎で夜その子のお土産を探していました。今思えばそのお土産にカステラでも買えばよかったのに、何を思ったのか女の子に似合うものはと思ってピンクの小さな「におい袋」というのを買ったわけです。「におい袋」なるもの自体、この時始めて知ったんですけどね。それを買っているとき、直ぐ隣に同級生のY子さんがいて、私がそれを買うのを見ていたようなんですね。
このY子さん、ちょっとポチャッとしているけど性格は明るく可愛くて、勉強も出来るので学年でも人気者の女の子だったのです。とてもしっかりした子で学級委員や生徒会活動もしていました。寒い日の朝、セーラー服の裾から両手を突っ込みおなかの所で手を温めながら「おはよう」と挨拶されたのを覚えています。
そうしたらそのY子さん「それどうするの」ってニコニコしながら聞いてきたのです。
まあ私には似合わないそんなものを買っているので興味でも湧いたのでしょう
「これ後輩のお土産にと思って・・・」と答えました。
それを聞いたY子さん
「いいなあ、私も欲しいな」って言ったんですよ。
作品名:バレンタインと小さなさいふ 作家名:のすひろ