「舞台裏の仲間たち」 47~48
1・7キロにも及ぶ岬の上に
無数の岩塊が並び、壮観な眺めとなっている野柳の遊歩道を歩きながら
貞園が夕べのことを思い出しながら又、ひとりで笑いこけています。
一帯には、独特な形をした奇岩ばかりがあちこちから出現をしています。
遊歩道は、どこまで歩いても興味をひく奇岩ばかりの景色が続いていきます。。
亀田社長とパートナーの姿が遠くに離れた瞬間を素早く見て取った
貞園が、順平の耳元で囁きました。
「昨夜はたくさん、お話はしたけど、
あなたは手を出さないし、ふたりして、清い関係で眠ったわ。
ずっと朝まで同じべッドに、一緒にいたのも、覚えていない?
そうなんだ・・・・
あなたは只の、呑み過ぎね」
ほっとした顔を見せる順平に、
貞園が思い切り身体を擦りつけてきました。
悪戯な笑顔を見せてから、もう一度順平の耳元でささやきます。
「あと、2泊、わたしを指名したままにしておいてね。
お願い、あなたがとても気いったの。
今日もたぶん、呑みに出るでしょうけど、
あなたと私は、帰るまでは、ずっと同じままで、パートナー!」
海岸線に並ぶこれらの奇岩は、造山活動によって
海面に押し出された岩石が、風化や海水の浸食を受けて形成されたものです。
その形から「蜂窩岩(ミツバチの巣)」、「豆腐岩」、「女王頭蕈(クレオパトラの頭)」、
「蕈状岩(キノコ岩)」などと名前が付けられています。
名前を見るだけでも十分に、そのユニークさが伝わってきました。
なかでも必見なのは、クレオパトラの頭です。
その細くて長い首には、思わず見とれてしまいそうな美しさがありました。
岬の先端には白亜の灯台もあり、それが青い海原に見事に映えています。
そんな景色の中で、手を繋ぎ、はしゃぎ続ける18歳の貞園は、
とても娼婦には見えません。
作品名:「舞台裏の仲間たち」 47~48 作家名:落合順平