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Savior 第一部 救世主と魔女Ⅱ

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「でも、悪魔祓い師として教会の司祭が悪事を働いているなら止めなくてはならないし、悪魔憑きが増えるような事態も防がなくてはならない。そのために出来ることをやりたいんだ」
 そう言うと、リゼはこちらに視線を向けた。相変わらずの仏頂面で何事か呟く。
「やっぱり――を優先した方が―――」
「何だ?」
 聞き返してみても、リゼは淡々と、別にと答えただけだった。何か言いたいことでもあったのか首を傾げていると、後ろで部屋の扉が開く音がした。
「あら、アルベルト。まだここにいたんですの? まあちょうどいいですわ。市長が先日の爆発騒ぎの調査結果が出たから、気になるなら聞いてもいいとのことですわ」
 扉を開けたのはティリーだった。何かの手伝いで呼ばれたはずが、まさかもう終わったのだろうか。
「全くラウルさんに市長に、わたくしたち全員を呼びたいならまとめて言えばいいのに。往復する羽目になったじゃありませんの」
 どうやら市長とその部下のラウルとで別々に人を呼ぼうとしたらしい。往復させられたことに文句を言うティリーに続いて、アルベルトとリゼは市長室へ向かった。



 夜。リゼ・ランフォードはメリエ・リドス役場の建物の屋上から、下町の暗い街並みを見つめていた。
 吹き抜ける夜風は冷たい。その中で、リゼはすぐ近くを飛ぶ影を見つると、右手を前に伸ばした。集中すると広げた掌の上にクリスタルのような氷の結晶が浮かぶ。さらにその周りに風が集まって氷の欠片を纏わせながら渦を巻く。
『――貫け』
 小さく呟くと氷の結晶は空中を滑るように飛んでいった。結晶はどんどん加速して、ふらふら飛んでいた小さな鳥に突き刺さる。鳥はまっさかさまに地面に落ち、羽をばたつかせた。
「魔物ね」
 魔物。生物の死骸に悪魔が憑依したもの。所々腐乱した小鳥は赤い目をぎらつかせ、甲高い泣き声を上げながら氷の呪縛から逃れようともがいている。その小さな身体にリゼは容赦なく剣を振り下ろした。
 魔力を注いで魔物の中の悪魔を浄化する。消滅する直前に悪魔の断末魔の叫びが虚空にこだました。
 悪魔が完全に消滅したのを確認してから、リゼは剣を鞘に納めた。できれば今日中にこの街の残りの悪魔憑き達から悪魔を祓ってしまえるといい。少なくとも分かっている範囲だけでも。
「さあ、悪魔を滅ぼしに行かないと」
 そう言って、リゼは夜のメリエ・リドスへ歩き出した。