赤のミスティンキル
世界情勢
時に、アズニール暦1197年。
人間《バイラル》が統治する七つの国家間では特に諍いごとは表面化しておらず、ここ百年は平穏であるといえる。
この時代、“世界の色がくすんだ”という珍事を除いては、とくに諸国家の歴史書に刻まれるほどの事件はないであろう。
しかしながら、魔導に関しては別である。
魔法に関わるすべての者にとって、“魔導の復活”という、刮目に値する出来事が起こるのだから。
デュンサアル山。
“炎の事象界《デ・イグ》”に最も近いとされる龍人《ドゥローム》の聖域。
深紅の瞳を持つ若きドゥロームがここにたどり着いたところから、魔導の、そしてミスティンキル個人の物語は始まる――。