フェル・アルム刻記 追補編
七. 運命の渦中にあった者達、その後の出来事
ここでは、「フェル・アルム刻記」における運命の渦中にあった者達
――ルード・テルタージ、ライカ・シートゥレイ、ティアー・ハーン、〈帳〉、サイファ――
一連の事件の顛末を迎えた彼らの、その後を綴る。
〈フェル・アルムのアリューザ・ガルド還元後〉
“大いなる変動の時”――すなわちフェル・アルム暦1000年は、アリューザ・ガルドの暦法であるアズニール暦に換算すると1056年にあたる。アリューザ・ガルドではこの出来事を“失われた大地の還元”と呼ぶようになっている。
その年の夏、にわかに空には暗雲たれ込め、大地震と、天を轟く雷がアリューザ・ガルド全土を襲った。地異が過ぎ去った後、“失われた大地”と呼ばれていた地域に忽然と姿を現した島こそが、フェル・アルム島だった。
当初、魔物の棲む島として敬遠されていたものの、独自に王国――フェル・アルム王国――が築かれているのが判明すると、ティレス王国はフェル・アルムと国交を結んだ。
一方でティレスの隣国であったイイシュリア王国は1058年、フェル・アルムの制圧に乗り出すが、フェル・アルム女王サイファ・ワインリヴ指揮のもと、フェル・アルム精鋭騎士団“烈火”により退けられる。この戦いの後イイシュリアは国内外からの反発を買い、1059年にはティレスに併合されることになる。
(これ以前のアリューザ・ガルド情勢については、書物『悠久たる時を往く』に詳しい)
サイファは、宰相たち、相談役のウェインディルと共にティレス王国へ赴き、対等な立場での国交を樹立させることに成功し、再び島へと戻っていった。
作品名:フェル・アルム刻記 追補編 作家名:大気杜弥