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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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遠い想い

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 小学校を卒業して数十年、初めて同窓会に出席した。
 これまで何度も案内のはがきがきたが、そのたびに欠席で返信していた。

 今回も欠席で出そうと思っていた矢先、街でばったりあった級友に「一緒にでようよ」と誘われ、一度くらいは出てみようかと出席の返信をした。

 新年になって二日。市内で一番大きなホテルを会場に同窓会は開かれた。
 あまりにも不在の時が長かったためか、地元にいて時折見かける顔以外は、声をかけられても胸につけたネームプレートを見るまでわからなかった。

 だれが来ているか確かめようと、受付でもらった卒業名簿を見たとき、見慣れない名字があった。

──エドガワ? こんな名字の人、いたっけ?

 よくよくみると喧嘩相手だった男子で、見慣れないのは彼が婿養子に行ったためだということがわかった。
 しかも、もっと驚いたのは備考欄に物故者とある。

 近くにいた幹事に聞いてみると、「事故だったんだ。もう七年になるかな」という。

 ふと、彼の昔の笑顔が思い出された。

 あれは、中学校を卒業したばかりの頃。
 わたしとは別々の高校へ進んだ彼が、ある朝、わたしが駅へ向かう途中、まったく見当違いの場所から自転車で走ってくるのが見えた。

「やあ、おはよう」と彼。
「なに? なんでこんな所からきたの?」

 彼は笑いながら、「家を早く出すぎたから、公園で弁当食ってきた」という。
「はあ?」
 わたしはあきれて笑った。

「乗れよ。駅まで行くんだろ」
「いいわよ」
「いいから、乗れよ」

 少しの間の押し問答のあと、彼に押し切られるように、自転車の荷台にこわごわ乗った。
駅までは自転車で七〜八分。

 町中を走っていると行き会う人にじろじろ見られ、気恥ずかしかったが、こんなわたしに彼はお構いなしで、鼻歌交じりで自転車を走らせる。

「ここでいいよ。ありがとう」
 駅が見えたところでそういった。
「遠慮するなよ。もうちょっとだぞ」
 これ以上一緒にいたら、友だちに何を言われるかわかったものじゃない。
「いいから。ほんとに。ありがと」
 ぱっと飛び降りた。ちょっとバランスを崩して転びかけたけど、なんとか体制を保つことができた。

 案の定、待っていた友だちに見とがめられ、冷やかされた。
 平気な振りをして、聞きながしたものの、胸の奥はドキドキしていた。

 あの頃。
 彼を好きだったのかな? わたし。

 彼はどんな気持ちでわたしを自転車に乗せたのかしら?

「じゃあ、な」
 あのとき、振り返って笑った彼の口元からこぼれた白い歯がさわやかだった。

 もう一度、あってみたかったな。

 思い出話に花を咲かせ、楽しい時間を過ごした同窓会の会場を出たわたしは、あの日、彼の自転車にのって走った道をたどりながら家路についた。
作品名:遠い想い 作家名:せき あゆみ