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「舞台裏の仲間たち」 45~46

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 中国進出を見据えた台湾政府による国家的プロジェクトは、
1980年代初頭から本格化をしています。
これを後押しした背景のひとつに、人件費の安い東南アジア用として、
日本から、廉価で高性能なプラスチック成型機が大量に輸出されたことがあげられます。
香港や台湾を中心に樹脂生産が盛んになったことから、
弱電や家電メーカー、自動車の部品メーカーたちが海外生産の拠点として
国内から台湾へ、大量の金型も移動し始めました。
(プラスチック製の造花として名をはせた「香港フラワー」の登場もこの頃です)

 プロジェクトにおいて、もっとも指導的な役割を果たすために
従業員の一人を引き連れて台湾へわたった亀田社長は、
現地で、すでに金型工場の建設に着手をしています。

 羽田空港まで着いてきたレイコは、終始不機嫌そうです。

 「だってさあ・・・・公娼制度のある国でしょう。
 農協さんの御一行さんだって、のぼり旗を押し立てて、
 売春ツアーを組むって言うくらいの、好ましくない噂のある国だもの、
 順平だって、どうなるかわかんないでしょう。
 いくら仕事と言ったって、
 24時間働いている訳じゃないもの・・・・
 なんでよりによって、台湾なの」


 やっとのことで私に、ボストンバッグを渡してくれた時には
もう、両眼にはうっすらと涙さえ浮かべています。
クドクドと言い訳をしたところで、レイコは聞く耳をもたないようです。
仕方が無いので、柱の陰に隠れてほっぺに軽くキスをすると
もう一度と言って目をつぶり、レイコが唇をさしだしてきました。
まいったなあと思いつつ、勇気を振り絞ってくちずけをしてしまいました。
初めての集団監視の中でのキスでした・・・・
やっと笑顔を見せたレイコが別れ際に、ハイと言って餞別を差し出します。

 すこし厚めの封筒でした。
もう一度、耳元に顔を寄せたレイコが小さな声でささやきました。

 「もうとっくに覚悟はしてるわよ、私だって。
 でもさあ、認めるのは嫌だもの・・・・そこのところだけはわかってね。
 男の人特有の付き合い方もあるでしょうから、
 そこに、少し余計に入れておきました。
 あなたの、お仕事の世界のことだもの、やむをえない事もあるでしょう。
 でもね、お願いだから、無事で帰って来て頂戴。
 首を長くして待ってるから」