「舞台裏の仲間たち」 45~46
最新鋭機械の相次ぐ導入で、支援する地元の銀行からも、
『これ以上は無理』との制限を受け、運転資金にも行き詰まっていた
亀田社長が追加融資付きという優遇条件に、いち早い
決断をくだした結果です。大まかな方向性が決定されたその事前協議の帰り道、ハンドルを握る順平が助手席で汗をぬぐっている
亀田社長に声を掛けます。
「社長、大英断ですね。
大丈夫ですか、台湾とは言え相手は中国人たちです。
メイドイン・チャイナといえば、
模倣や盗作ありの、仁義なき世界と言う評判もあります。
かなりの覚悟で乗り込む必要がありますからねぇ」
「うん、すべて覚悟のうちだ。
こちらの金融機関では、慨にうちは見放されている状態だ。
台湾進出の追加融資策はうちにとってはありがたい。
こうなればもう、前に進むしかあるまい
大変なことは承知の上で、台湾でひと花咲かせるのも悪くないだろう、
第一、むこうはいまだに公娼制度が残っている国だ。
女も買いたい放題だ、
それを考えれば、悪くない話だろう、え、順平君」
「社長は好きですからねぇ、そういうのが。」
「英雄色を好むと言って、
男が物事を成し遂げる裏側に、常に女はつきものだ。
ましてや、台湾は50年間も日本が植民地支配を続けてきた
歴史を持っている国だ。
やり遂げて見せるさ・・・・
これでうまくいけば、うちは海外でもやっていけるようになる。
順平君、
足がかりは我々でしっかりと造ろうじゃないか。
金型もすでに、東南アジアから全世界を目指して
海外進出をなしとげていく時代だ。
あと10年もしたら、中国本土にどでっかい
金型の工場を建ててやろうじゃないか。
人口が10億人以上も居る中国は、
これからの世界経済のキーワードになるはずだ」
「たしかに、台湾進出を足がかりに
本格的に中国進出を画策している企業は多いようですね。
中国市場が開放されれば、たしかにかつてない規模の世界が開けます。
壮大な計画になります・・・・」
「男の夢は、でっかいほうがいい。
しっかりと足元を築いておくから、あとから
ゆっくりと現地視察に来てくれよ。
大歓迎するからさ」
「もう、向こうで成功したような口ぶりですね。」
作品名:「舞台裏の仲間たち」 45~46 作家名:落合順平