四神倶楽部物語
とは言っても、私たち全員で八人、身近な兄弟姉妹となりました。そのためかもうお互いに遠慮はいりません。
「そうね、今日はグリーンスターの政治を見てもらうわ。私たち四神倶楽部は、理想とする国の形、そこへの国造り、それを秘密裏に工作してきたのよ。まだ途上だけど、お兄さんたちにぜひ参考にして欲しいわ」
魔鈴が私の、今日はどこへ、の問いに、しばらく天車を飛翔させてからこんな回答をしてくれました。そして私たちもそれに照れもなく、「政治ね、面白そうだね」と本音で返せるようになりました。佳那瑠も興味があるのか、遠慮もなく要望します。
「魔鈴さん、この星の政治はどういう構造になってるのか、まずはそのレクチャーをしてくださらない」
私は佳那瑠の関心事は男だけだと思ってましたので、彼女はこういうことにも興味がそそられるのだと初めて気付きました。意外ではありましたが、佳那瑠の本質は、実は政治好きなのかも知れませんね。そしてそれに応えて魔鈴が語り始めます。
「このグリーンスターって、自転していなくって、生物が住める所は星の表と裏、その境界の限られた帯ゾーンだけでしょ。だから結構過酷なのよ。だけど、そのためなのか余計にこのグリーンスターが愛おしく、私たちにとって掛け替えのない星なの。それで私たちの四神倶楽部は表には出ませんが、一所懸命サポートしてきたのよ」
これに早速佳那瑠が「今回訪問させてもらって、それがよくわかりましたわ」と返し、私たち全員は「その通りだね」と頷きました。
「目指してる世界は、この小さな星を未来へと繋げて行くために、地表の自然、それを加工することなく、あるがままに守る。そして、それを受容し、緑星人たちはその条件下で共存し、持てる知恵を駆使し活き活きと生きる。そんな社会を私たちは目指してるのよ」
魔鈴は運転しながらではありましたが、力強く言い切りました。私たちはその迫力に負け、しかしそこには明確な未来像があり、なんとなく羨ましい気分となりました。
「自然を加工せず、それをあるがままに守る。そして、その義務を果たして行く中で共存し、人たちは活き活きと生きる、そんな社会をね」
私たちは魔鈴の言葉を繰り返し、なるほどと感心しました。そんな反応を魔鈴は確認し、嬉しそうです。
「その目指す社会を実現させるための基本的な方針、それは──インデペンデンス(independence)とリコグニション(recognition)よ。それらを世の中に根付かせ、より醸成(じょうせい)して行くこと、それが私たちの四神倶楽部の使命なの」