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四神倶楽部物語

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「ティラ君、よしよし」
 魔鈴はまったく動じてません。ヤツが突き出してきた頭を撫でてやってるではありませんか。
 そして今度は、その恐い顔にキスしながら、「お兄さんも、ハグくらいしてやって」と私をプッシュしてきました。

 それにしても不思議でした。なぜか徐々に恐怖心が消えていくのを自分でも感じたからです。私は覚悟を決めました。ゆっくりとティラ君に近寄って行き、その顔に抱き付いて頬ずりをしてやりました。するとどうでしょうか、ヤツはやっぱりニッと笑ったのです。
 その上に、私を潤んだ瞳でじっと見つめてきます。その時でした、私はハッと思い出したのですよ。

 さっきの虎もそうだったのですが、こいつも緑目、そう、グリーンアイズだったのです。そして遠い昔に聞いた話しが蘇ってきました。緑目を持つ動物は──アニマノイドだと。
 つまり高等知能を備え持った動物ロボットだということです。
「お兄さん、やっと思い出したみたいね、良かったわ。この子、お兄さんが小さい頃、お気に入りにしていた、ティッチンよ」

 私は魔鈴が呼んだティッチンという呼び名、これで急に懐かしい気持ちが込み上げてきました。
「ティッチン、元気にしてたんだね」
 私は思わず目頭が熱くなり、もっと頬ずりをしてやると、ニッニッと笑ったんですよね。もうティッチンが可愛くって可愛くって離れられません。
 そんな私を、魔鈴は引き裂くように、「お兄さん、また会えるから、行きましょう」とケリを付けてくれました。そして私たち四人は再び魔鈴が運転する車でホテルへと向かいました。

 さすがグリーンスターです。地平線が緑の夕焼けに輝いています。そして目を大空へと向けますと、その色彩は虹色であったり、また時間の流れの中で、オーロラのように青や赤、そして緑の光の帯がゆったりと流れて行きます。

 さらに目を見張ったのは、翼の開長が10メートル以上はあるでしょうか、数え切れないほどの翼竜、ケツァルコアトルス(Quetzalcoatlus)が悠々と飛翔しているではありませんか。まさに幻想的な大空がそこにあったのです。


作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊