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四神倶楽部物語

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 それからのことです、この小さな密室が見る見る内にですよ、巨大な空間へと拡大されて行ったのです。私たち四人はこれには目を疑いましたよ。それはあまりにも突然でしたし、有無も言わせず密室が物理的に肥大するものですから。

「ねえ、これって、ひょっとしたら、部屋が大きくなって行ってる……、のと違うかな!」
 佳那瑠が叫びました。なぜなら私たちそれぞれの間の距離もどんどん離れて行ってました。もう大声でないと互いの声がよく聞き取れません。悠太がこんな現象を理解できず、「どういうことなんだよ?」と叫びました。すると佳那瑠は、さすが現状把握と解析が早いですよね、大声で謎解きをしてくれました。
「これって、不思議な国のアリスよ! 私たちの方が小さくなってるのよ!」

 佳那瑠のこの絶叫に、私たちは一斉に一種の感動をもって、「その通りだ!」と唸り返しました。そして身が縮まる体感がなくなった時、私たちはキャリーバッグを相変わらず引っ張る状態で、だだっ広いフロアーに、離れ離れで、それぞれが四角形のコーナーにポツンポツンと立っていました。

「集合!」
 私はここは冷静に声を張り上げますと、みんな息を切らせながら駆け寄ってきてくれました。そして私たちは一団となり、そびえ立つ部屋の壁を見上げ、ただただ呆然。それでも私はリーダーとして、「おっおー、俺たち、50分の1くらいに縮んだのかもな」と目測した時です、遠くの方から男が走ってきました。

 よく見ると、どうもホテルのボーイさんのような?
 そして丁重な口調で……。
「高瀬川龍斗さまの御一行さまですよね。グリーンスターへの旅、わたくしどもの宇宙ペネトレート・ホテル、すなわち和名で申しますと宇宙貫通旅館なのですが、ここに御一泊の予約を頂いております。さあっ、こちらでチェックインをお願いします」

 こう案内された私たち、そびえ立つ壁の隅っこにあるドアーから、向こう側の空間へと入って行きました。するとそこに存在していたもの、これホント、驚きましたよ。つまり五つ星の立派なホテルのロビーが、そこにあったのです。そしてガイドされるままに私たちはカウンターでチェックインをしました。

「次の宇宙駅は12光年先のはくちょう座でございます。20光年先のグリーンスターは明日の午前11時頃に到着致します。その1時間前にはご連絡致しますので、それまでごゆっくりお寛(くつろ)ぎ下さいませ。またブラックホールの貫通を避けるため、回り道をすることがございます。その時は若干の時間の遅れが生じますので、あらかじめ御了承下さい」
 黄金色の瞳を持った、とんがり耳のお姉さんからこんな案内を丁寧に受けました。私たちは充分満足で、「よろしくお願いします」とだけ返しました。

 こうして私たち四人はそれぞれの部屋へと案内され、旅の初日の夜を過ごすこととなったわけです。




作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊