小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

四神倶楽部物語

INDEX|6ページ/149ページ|

次のページ前のページ
 


 私は槇澤の話しに、「そらそうだな」と大きく頷き、「禁断の扉であろうがなかろうが、そんなの関係ないよ。槇澤にとっては、家賃が安いのが一番だ。それで、当然契約したんだろ?」と、その顛末を知りたくて、私は思わず顔を前へ突き出しました。

 もちろんだよ。すぐに契約したよ。
 だけど不動産屋が言った禁断の扉、その言葉がね、ちょっと心の隅っこに引っ掛かってしまってね。担当者に、それって、なぜ禁断の扉なんですか? って訊いてみたんだ。するとそいつはちょっと心配そうな顔付きをしてね。
「禁断の扉は、いわゆる禁断の扉ですよ。よくわかりませんが、どこかの男の楽園へ繋がっているとかの噂でして……、槇澤さんのご意志次第ですが、まあ、お気を付けて下さい」ってね、不動産屋はそう答えただけ。

 だけど今考えてみると、あれはメチャクチャ歯切れの悪い返答だったんだよなあ。
 そんなこともあったのだけど、俺は特に気にもせず、早速契約して、そのアパートに住み始めたんだ。それが実に快適でね、確かにもっけもんだったよ。

「ほー、それじゃアッタリーで良かったじゃないか、入居おめでとう」私はビールのグラスを槇澤のグラスにカチンと合わせ、ヤツの幸運を祝福してやりました。すると槇澤は、今度はなぜか何かを訴えるような眼差をして、私をじっと見つめてくるではありませんか。

 ああ、あの時まではね。
 そう、あれは住み始めて、1ヶ月経った頃のことだったかなあ。ある夜のことだった。それも草木も眠る丑三つ時に。コンコン、……、コンコン。
 その禁断の扉の向こうから誰かがノックしてきたんだよ。ホント、ゾーッとしたぜ。

 だけど、これって、考えてみれば、隣人からのノックだろ。無碍(むげ)にするわけにもいかないしね。俺はベッドから降りて、扉の所まで行って、できるだけ落ち着いた声で訊いてみたんだ。「どうかされましたか?」ってね。
 するとね、龍斗。まあ、それはそれは甘い声でね。「ね〜え、良樹さん。イケメンの良樹さん」って仰(おっしや)るんだよ。これホント、度肝を抜かれたよ。だって、いきなりなんだぜ。苗字ではなく名前で――、良樹さん、てね。

 俺としては、イケメンは充分納得できるけど、とにかく名前で呼ばれたんだぜ。


作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊