四神倶楽部物語
私は何回か書き直し、助け出して欲しいって、具体的にどうすればよいのか、それを尋ねるメールを返信しました。すると沙羅という女性からすぐに返事が返ってきました。
高瀬川様へ
早速のご返事、ありがとうございます。それじゃ遠慮なく申し上げます。
私の高瀬川様へのお願いは、時が普通に流れている高瀬川様の世界に、私を連れ戻して欲しいのです。そのためには、次のようなことを実行して頂けないでしょうか。
高瀬川様の時間の5月4日の正午に、私は京都の一条戻り橋の西詰めにおります。その私を東詰めへと、橋を渡って連れ戻して欲しいのです。
そんな単純なことで結構でございます。
ただ前もって申し上げておきますと、その時、私はまだ5月3日のままでございます。そのため、お会いできるかどうかがちょっと心配です。
いずれにしても、京都の一条戻り橋にやって来て頂きたいのです。よろしくお願い致します。
沙羅より
沙羅さんからの返信は、こんな唐突で、半分意味不明な内容でした。そして私は、京都の一条戻り橋という地名、それがメール上に不意に表れ、驚きました。なぜなら、私は学生時代を京都で過ごしました。だから、京都の一条戻り橋という橋がどういう謂(い)われの橋なのかを知っていました。
そのため、その一条戻り橋と言う橋の背後に隠されている神秘、その物恐ろしさが何となく感じられるような気がしたからです。