四神倶楽部物語
旅は終わり、私たちは元のネット通販会社の仕事へと戻りました。
夏期休暇明けで忙しく、あっと言う間に九月となってしまったわけですが、私は業務の都合上、しばらく四神倶楽部の活動から遠ざかるを得ませんでした。しかし、魔鈴たちと四神同盟を結んだことでもあり、放っておくわけにはいきません。
旅も終わり、グリーンスターの地底ホテルを出立する朝、私たちの決意を魔鈴たちに告げました。四神の本来のミッション、愛する星や国を守る、故に日本を守ることにしますと。まことに立派な決意だし、それを粛々と実行したい。しかし、具体的に何をして良いのか、まだよくわかりません。されどです、私たちは話し合い、とにかくいざ鎌倉に備え、下準備だけはしておこうと決めました。
しかれども、ここで難問が。魔鈴たちが準備してくれた私たちの秘密基地、それは京都の御所近くの町屋にあり、なかなかそこへ行くチャンスがありません。そのせいか私はまだ一度も訪ねたことがありませんし、正直どうしようかと迷っていました。そんな時に、やっぱり仲間ですよね、佳那瑠が提案してくれたのです。
「龍斗さん、京都って新幹線に乗って行かないとダメでしょ。時間も取れないし、邪魔くさいと思ってるのでしょ。私がなんとかしてあげるわ」
パソコンに頭を突っ込むようにして、私がパワーポイントで資料を作成していた時のことでした。佳那瑠が画面を覗き込むようにしてそばに寄り添ってきて、そう囁きました。私はずっと秘密基地のことが脳の奥深い所にこびり付いていて、佳那瑠のこんな申し出にパッと目を大きく見開きました。
「えっ、佳那瑠、頼むよ。それで、どうするの?」
私は嬉しかったですが、佳那瑠が何をしてくれるのかがわからず聞き返しました。すると佳那瑠は妖しく笑みを浮かべ、一言だけを口にしました。
「扉よ」