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Largo 〜ゆるやかに〜

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番外編 ひとりごと




 朝、目覚めて一番最初に目に入る先輩の綺麗な寝顔。
 毎朝のことなのに、いまだに慣れない。
 今でも、一緒にいることが信じられない人。

 長年のすれ違いが、今の幸せを、より際立たせてくれているのだろう。

 あれから、ずっと待っていた。
 その間、先輩が、俺と居る為の努力をしてくれたからこそ、一緒に居られる今がある。

 学生の頃は、なぜ、先輩が俺なんかにかまってくれるのかわからなかった。ただ、先輩に特別扱いされるのが嬉しかった。

 学校に行けば必ず先輩に会える、というわけでもなかったし、今日は会えるだろうか、などと偶然の出会いを期待しながら学校に行った。
 会えたら、当然嬉しかった。

 だから、先輩の特別になれた時は、信じられない気持ちだった。

 俺が、コンクールで優勝して留学を勧められた時には、先輩は俺の背中を押してくれた。甚だ、乱暴で強引ではあったけれども。
 だが、そのおかげで俺の世界は広がったし、ちゃんと自分の足で立っていられる方法も身につけた。

 留学中や、それ以降…再会した後も、次にいつ会えるかなんていう保証はどこにも無かった。
 いつもいつも、ただ、会いたかった。

 その先輩が、今こうして俺の隣で、手を伸ばせば触れられる距離で眠っている。

 必ず、毎日会えることの幸せに、俺は感謝せずにはいられない。







作品名:Largo 〜ゆるやかに〜 作家名:萌木