Magic a Load
「・・・・・。」
「リーとサラが居なくなった。コイツのせいで。」
「おい・・。」
ジェイコブの口をディビットが押さえにっこりと微笑みながら落ち着いた口調で再び説明した。
「悪いなバーバラ・・えっとな俺の予想ではリチャードとサラは何者かに誘拐されたかと・・・。俺は思っている。」
「ちょっと、それ本当なの?!サラが・・・・。」
バーバラはみんなからは落ち着いているように見えたが内心は怯えきっていた。それも無理はない。サラはバーバラの親友なのだ。大親友といってもいいほど。
バーバラは後から両手に冷汗をかくのを感じていた。
アンディはバニラシェイクを一口飲んでから呟くように言った。
「だからね、きっと二人は悪い魔法使いに連れ去られたんだよ。だってさ、フランシスが不思議に半分赤くそまった三日月を見ながらこう囁いたんだよ?」
「どう囁いた?」
これはアンディ以外全員がアンディに問いかけた。
((今日はとっても良い日になると思うよ。最高の日だ、そうは思わないか?アンディ。))
「って、言ったんだ。実はアイツが悪い魔法使いで二人に恨みを持っていて、それで二人を何処かに連れ去ったんだ。僕はそうとしか考えられないね。」
「んな訳、あるかよ。それに俺ら良い年だぜ?大学生になってもんな魔法とか言ってられるかよ。」
「じゃぁ、リチャードの事はもうどうでもいんだね?」
「あああ?そうは言ってねぇだろ!!!!」
テーブルをがたっと音を立たせジェイコブの向かいにいるアンディの胸倉を掴み暫く二人は威嚇しあったが珍しくジェイコブはぱっと胸倉を離しがさつに椅子に座りコーラが入っている紙カップのストローを取り出しがじがじと噛み始めた。
ジェイコブもリチャードがいなくなると手まで出せなくなるらしい。
アンディはジェイコブに胸倉を掴まれた部分を手ではらいふんっと鼻を鳴らしオニオンフライを一口かじった。
バーバラは少し考え込むように唸り声を上げて言った。
「そうね、あの二人なら何か知ってるかも。図形や魔法にも詳しいあの二人なら。」
「僕だって詳しいのに。」
アンディはむうっとした顔をしながらまたバニラシェイクを飲んだ。その顔にジェイコブは鼻を鳴らし返しながら足を組みながら言った。
「お前のは詳しいっていうかただの趣味だろうが。」
アンディはバニラシェイクのストローをジェイコブの目にバニラシェイクをぴゅっと飛ばした。ジェイコブは目を押さえながらもアンディの胸倉を掴もうとしたがディビットに体事抑えられた。ディビットは立ち上がりみんなにこう告げる。
「では、その二人の良い魔法使いの家へと早速向かおうではないか。」
そう言い、4人はハンバーガーショップを後にした。
――――
「「え?サラとリチャードが誘拐されたって?それも・・・えっと誰に?」」
双子のニックとナンシーは同時にそろって声を上げた。ナンシーは不安げだったか内心緊張している。
目の前に今は落ち込んでいる姿だが大好きなシンがいる。
抱き寄せたい気持ちでいっぱいだったがシンが好きと思われているバーバラがシンをしっかり掴んでいたのでそれはできなかった。
がナンシーはシンの頬をそっと撫で優しい口調で言った。
「えっと、そうね・・お兄さん・・。とりあえず私達の家に入って話し合いましょうよ?」
ナンシーはシンの頬を撫でながら上目遣いで兄、ニックの顔を見る。
ニックはナンシーにはとても弱い。上目遣いなんかで見られたら断る事すらできない。
ニックは肩をくすめみんなを部屋に誘導した。
ニックの家には三階建てで三階はちょうど空き部屋だ。そこだけは変に拘りがあり。
全て木材でできている。まるでツリーハウスのように。
太い木の柱も何箇所かありそこにはニックかナンシーが幼い頃に書店で買ってもらった魔法の辞典に書いてあった魔法の文字が彫られている。
この風景にアンディだけは背中に鳥肌が立つほどゾクゾクさせ興奮している。
アンディはたまらない声を出した。
「くう、やっぱ久しぶりにこーゆうのを見るといいね!リチャードにも見せてやりたいよ。」
「は?あのなぁアン。アイツはこーゆうおこちゃまな部屋好むと思うか?
魔法を嫌ってるんだぜ?ほんと、お前はアイツの事何も解っちゃいねぇ。
太い木の魔法の文字にジェイコブは唾を吐こうとしたがディビットにまた胸元を押さえられた。ディビットはにっこり微笑む。
その微笑にジェイコブは顔だけを後ろに引く。
「な・・・なんだよ。」
「アイツの事、本当に良く知ってるの?」
「はぁ?何だよお前まで!!最新型のiPhone5わざわざお前のお店でようやく手に入れてやったってのに!!お前まで喧嘩ふっかけんのかよ!いいぜ!!その喧嘩買った!」
ジェイコブがディビットを押し拳を構えた時、木製のドアが開いた。
シン以外はみんなそっちへと視線を向けた。
真っ白い妖精が着るような服でナンシーは紅茶を載せたお盆を持っている。
ナンシーはアンディたちが座っている席へやってきて紅茶を一つずつ置いた。
生クリームがたっぷりのったマフィンと一緒に。
マフィンに一番先に手を伸ばしたのはアンディだった。アンディは嬉しそうにマフィンにかぶりついた。
ジェイコブはそんなアンディを見て飽きれながらもアンディの隣で胡坐をかき不機嫌な声で言った。
「あーあー、紅茶かよ。コーラとかない?マフィンは美味そうだけど。」
アンディはちっちっちと声を出し人差し指をジェイコブの前に突き出し何度かふる。
ジェイコブは眉間にシワを寄せアンディを見た。
「あのね、誘拐+魔法+木こりの家+生クリームマフィン+紅茶ときたら解らない?
まぁ、君の頭では理解できないだろうね。こんなイギリス式な瞬間が訪れてるというのに。」
「あのな、返してやるけどアイツらは単に誘拐されただけだ!!それに魔法だの生クリームマフィンと紅茶って言ってるけどよ。くだらなすぎだろ!だいたい木こりの家じゃなくってツリーハウスだってのバーカ。
大体、大学生になってまで魔法使いがいるってのを信じてる方が頭どうかしてんじゃねぇか?!警察に助け求めたほうがほうが早いっての!!
な?ディビットは俺の見方だよな?」
しかしディビットは太い木に寄りかかり紅茶をすすって肩をくすめただけだった。
ジェイコブはそのディビットの態度についに大声を出した。
「はぁ?!お前だって今の時代の男だってさっき店で言ってただろ!!裏切るのかよ!」
「別に・・君を裏切ったわけでもない。でも俺は"魔法"の事は君に一切、言ってないよ。だから勝手に解釈されても困るんだけど?」
ジェイコブはかぁっと顔を真っ赤にさせる。アンディはくすくすと笑ったがその笑いがジェイコブの最後の怒りに火をつけてしまったそうで。
アンディは胸倉を捕まられるとジェイコブの拳が頬にひっとしアンディはツリーハウスの中でしりもちをついた。がアンディも引かずにジェイコブに飛び込んむ。
ディビットはさすがにやばいと思ったのか紅茶をテーブルの上に置きジェイコブを後ろから取り押さえたがディビットがしている眼鏡が吹っ飛びディビットも後ろに吹っ飛んだ。
ディビットの変わりに次にジェイコブを取り押さえたのはニックだった。
アンディはバーバラに押さえられている。
作品名:Magic a Load 作家名:悠華