Magic a Load
「そうか。君らが例の人物達だね。この日をどんだけ待ちわびていた事か。
特に、、、って君ら!そこから動くのではない!私は決して怪しい人物ではないのだ!」
クロウリーはシン達を指差し言った。するとシン達の体は勝手にクロウリーの前へと移動させられたのだ。
ディビットは呆れた表情で肩を落としひっそりと言った。
「まさか、と思うが・・・今のは物語の"魔法"とか言うやつだったり?」
「まさか、そんなはずないだろ!魔法なんて子供だけが信じるモノだって、ディビットお前さっきまでまともにそう言ってたじゃないか。」
シンは両手を上げ首を左右に振った。
しかしこの男だけは真剣な眼差しで既に信じきった口調で割り込む。
「いや。これはもう本当の物語の中かもしれないよ。この男・・・どこかで見た事があるんだ。」
「「ありえねぇ!!」」
シンとディビットの声は綺麗に揃い洞窟を響き渡せた。ニックは指先で自分の顎を突っつき片方の眉を吊り上げ考えこみ始めた。
ディビットはライターを取り出しシュボッと音を立てオレンジ色の火を煙草に付け、近くにあった岩に足を膝の上に置き深い溜息を付いた。
「マジかよ。こんな所でフランシスに会っただけでも苦痛なのに。こんな意味も解らない突然出てきた"魔法使い"とやらを信じろと?俺ら20歳は過ぎてるんだぜ?
なのになんなんだ、この拷問は。リチャード、大体お前があの夜に中庭に行ったのが間違いだったんじゃねぇのか?」
リチャードは額に汗を軽くかいた。ディビットの言葉はまだ続いた。
「大学でシンと会って、坊ちゃんだからってみんなをこんな所に連れて来させるのも良い加減にしろよ?物語好きなのはそこに居る兄弟とアンディだけで勘弁してくれ。
お前の事はシンから良く聞いてた・・・俺はお前だけはまともだと思ってたのに。裏切られた気分だよ。」
リチャードは声を震わせ言おうとしたらシンがもう既にディビットのネクタイをぐいっと引っ張っていた。バーバラはシンの背中の脇をぎゅっと掴んだがシンの口は抑えられなかった。
シンは怒鳴った。
「あのな!!リーだってこんな事になるなんて思わなかったさ!な?そうだよな?リー。
それにお前此処に来てから態度悪いぞ!」
ディビットはシンの言葉にけっと床に唾を吐き出す。
リチャードはそんな二人を見て涙が出そうなのをぐっと堪えシンの袖をぎゅっと掴みか弱い声で言った。
「いいよ、シン・・・本当の事だから。あの日、俺がサラをきっぱり断れば良かったんだ。そしたらサラもこんな目に合わずにすんだのに。・・・・そうだな・・全部、俺が悪い・・」
リチャードの涙は耐え切れず頬をぽたぽたと伝う。リチャードは自分の袖で涙を拭うとシンがそっと頭を撫で優しい口調で言った。
「大丈夫だ、リー。ディビットは今、アンディとジェイコブが居なくなってそれで意味もわからずこんな所に連れて来られた事に少しだけピリピリしているだけだから・・。
それにこの場所からは絶対戻るよ。アンディとジェイコブもちゃんと一緒にな?」
バーバラは二人に気をつかいその場を離れふてくされているディビットの傍に寄りとなりに腰かけ言った。
「本当に、どうしちゃったの?いつものあなたらしくないじゃない。シンとは喧嘩なんてした事なかったのに。それに今の格好、凄くオヤジみたいよ?」
ディビットはもう一口煙草を加え白い息を吐きだしながらむしゃくしゃした口調で言った。
「自分でも不思議だよ。自分で抑えられない言葉が此処でだとすげぇ出てくるんだ。
・・・シンとは喧嘩もするつもりはなかったんだけどな・・・。」
「それだ。此処にはそんな不思議なパワーもあるんだ。此処の奴らは君らをバラバラにし仲を悪くさてしまう。その闇の力をあのゴブリン達は奪い取っているんだよ。」
クロウリー師は岩から身軽に降り腕を組みその場に佇んだ。
作品名:Magic a Load 作家名:悠華