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「舞台裏の仲間たち」 43~44

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 とりあえず図面が出ましたので持ってきましたと順平が言うと
社長が事務室を指さし雄二に一声かけてから、また頭から噴き出る汗をぬぐい始めました。

 「準備運転でもう、そろそろ一週間がたつのかな・・・・
 雄二も頑張ってプログラムを組んでいるんだが、
 本格的に稼働できるまでにはもう少しの習熟が必要になるみたいだ。
 機械加工が便利になるのは良い事だが、
 機械への過剰投資で経営自体が重くなりすぎてしまう、
 仕事を撮るためには、仕方のない投資だが、
 さすがに一台、2千万は荷が重い」


 工場内を一回りしてきた亀田社長が、
汗を拭きつつ、どっかりとソファーに腰を落としました。
見た目以上に疲れきっている亀田社長に、順平も眉を曇らせます。


 「社長。
 働き過ぎは良くないですょ。
 うちの社長も心配をしていましたが、
 雄二君の話では
 ほとんど工場に泊りきりの『缶詰状態』のようですね。
 過剰受注と過剰設備では、この先の行き詰まりも懸念されます、
 適当な処で見切りをつける必要があると思います」


 「さすがに、新進の金型部長さんは見る処が違う。
 うちの工場の弱点をちゃんと見抜いているね、さすがだよ。
 だけどね、順平君。
 うちみたいな零細な金型工場は、
 せめて最新の精密機械を導入しておかないと
 熾烈で、過酷になってきた受注競争には勝ち抜けていけないんだよ。
 背に腹は代えられなさ・・・・
 大丈夫だよ、倒れやしないよ
 雄二をはじめ4人の従業員の生活がかかっているんだ。
 此処で踏ん張らないと、俺たちの生活すべてが、パアになる」


 「そうですか・・・・
 くれぐれも無理をし過ぎないでくださいね。
 亀田金型さんは、うちの外注工場の中でも精密なものに関しては
 安心して仕事が出せる唯一の工場です。
 なにしろ貴重な戦力ですので、間違って
 倒れられたら、うちの会社も困ります。
 よくよく念を押しとけって、
 うちの社長からも言付かってきました。」

 「ありがとう、
 よろしく社長に伝えてください。
 で、今度の新型の納期はいつまでだって?」

 「先方の希望では、
 来月の10日には試作品が欲しいそうです。
 伸ばせたとしても、せいぜい、2~3日が限度です、
 大丈夫ですか、納期は」

 「なんとかするさ。
 毎月決まった仕事を回してくれる順平君のところには
 余り迷惑はかけたくはないからね。
 しかし、工作機械も進化したのはいいけれど
 ずいぶんと高価になってきたものだ。
 手動式の加工機械なら、500~から600万円程度で済むのに
 コンピューターが着いただけで、倍の1000万円、
 マシニングセンターになると、そのまた倍の、2000万円だ。
 機械設備には4倍もかかるというのに、
 金型の単価は、徐々に買いたたかれる・・・・
 君の会社でも新鋭機の導入の予定が有るそうですが
 もう機種は決まったの?」

 「機種の選定は終わりましたが
 コンピューターソフトの問題で、すこし時間がかかりそうです。
 各メーカーごとに規格がばらばらなために、
 一番、融通のきくところを選定中です」