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でんでろ3
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鋼鉄の迷惑

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第11話 シーソー作戦(反・反重力作戦2)



「で、次は、どうするんだ?」
天が聞いた。
「次は、こちらを使います」
なにやら厚くて太くて身の丈ほどもある長ーい板を持って地が言った。
「何だ、そりゃ?」
天が聞く。
「題しまして『ギッタンバッコン急に立ったら危ないってば大作戦』です」
地が意気揚々と答える。天も人もツッコむのが面倒なのでスルーして、
「で、具体的には、どういう作戦なんですか?」
と、人が聞く。
「子供のころ、シーソーで遊んだことはありますか?」
と地。
「そりゃ、まぁ、ありますが……」
人が答える。
「そのとき、つり合いが悪いと、重い方の端が地面に着いていて、軽い方の端が上に上がってしまったまま、止まってしまいますね」
と地が言う。
「ああ、地が言うところの『ギッタンバッコン』ができない状態になってしまいますね」
人が答える。
「その状態で、重い方の人が、急にシーソーを降りたらどうなりますか?」
地が聞く。
「いや、それは、絶対、やっちゃダメだって、教わるよな」
天が言う。
「なぜでしょう?」
地が聞く。
「なぜって、そりゃあ、重い方が急に立ったら、軽い方は、一気に落ちて、地面に叩きつけられるからだろ」
天が答える。
「はい、今回の作戦は、その原理を応用します」
地は、にっこりとほほ笑んだ。
「ここに取り出だしたります特製シーソー板は、ワンタッチでご神体上面に貼りついて、簡単にははがれません。まず、これを、ご神体上面に、貼り付けましたら、板の両端に1人ずつ取り付きます。この段階では、つり合いが取れているので、特に、効果は期待できません。次に、片方の端に、もう1人取り付きます。この段階で既に、成人男性1人分の不均衡が生じる訳ですが、ご神体は軽く持ちこたえてしまうでしょう。ところがです」
地は、ここぞとばかりに力を込める。
「ここで急に、1人の方が手を放すのです。ご神体が、この段階で、バランスを失って裏返ることも期待できますが、ダメだった場合には、ダメ押しに、手を放した1人が、ぶら下がっている2人に取りつきます。これで、完璧です」


 天、地、人の3人は例によって例のごとく、ご神体観察日記から割り出したベストポジションで張り込んでいた。そして、予定通り鋼鉄の迷惑がふよふよと飛んできた。
 天、地、人の3人は物陰から一気に躍り出た。地と人が板の両端を持っている。鋼鉄の迷惑の上面に板を載せるだけで、成人男子7人分の重さに耐えられるほどの力で、それは固定される。不意を突いたのが功を奏したのか、板を載せるのには成功。そのまま、地と人が板の両端に取りつく。
 ここで、若干、3人にとって予想外だったのが、鋼鉄の迷惑が、上昇し始めたことである。当初の予定では、3人とも、板の片方の端に直接取り付くはずだったのだが、天は仕方なく、地の腰のあたりに抱き着く格好になった。人も、ただ手を放すはずだったのが、ちょっとした高さから飛び降りることとなり、一瞬躊躇した。しかし、人が思い切って飛び降りると、さしもの鋼鉄の迷惑も角度にして45度ほど傾いたのだ。これに力を得た人は、上昇中の天の腰に抱き着いた。
 なおも上昇する鋼鉄の迷惑。人間が恐怖を感じる高さになってから? いや、実は、障害物のない高さになってから、鋼鉄の迷惑は3人が振り落とされないように、ゆっくりと回転を始めた。そして、3人がしっかりしがみついているのを確認すると徐々にその回転を速めて行った。
 そして、回転が速まるにつれ、天と地にある問題が生じ始めた。
「おい、人。そのしがみつき方、何とかならないのか? ズボンとパンツが脱げそうだ」
と、天が言うと。
「そういう天先生も、何とかなりませんか? わたしもさっきから脱げそうで」
と、地も言う。
 それが、聞こえたのかどうだか知らないが、鋼鉄の迷惑は回転を少し速めた。
「こ、これは、たまらん」
と、天。
「作戦も大事ですが……」
と、地。
「我々は、下ネタはやらんっ!」
そう言って、3人は同時に手を放した。
作品名:鋼鉄の迷惑 作家名:でんでろ3