小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

「舞台裏の仲間たち」 39~40

INDEX|6ページ/7ページ|

次のページ前のページ
 


 「いやだぁ~あなたたち。
 いつからそんなところに居たのよ、
 来たのなら、声をかけてくれればいいのに・・・・」

 「余りにもいい雰囲気で、時絵さんがなにかしてくれそうだと、
 さっきから此処で固唾をのんで3人で見守っていました。
 やはり、名女優はなにを演じても、絵になります。
 今日もたったいま、つうが舞い降りてきたのかと思いました」

 「あら順平君。
 ずいぶんとお口のほうが、お上手ですね。
 じゃあ期待にお応えして、つうがもうひと踊りしましょうか?
 この日だまりの舞台はなんとも気持ちがいいわ。
 いらっしゃい、茜ちゃん。
 ほら、此処に立って見て・・・・
 あそこの天窓から差し込む光は、100年前と同じなのよ。
 凄いと思わない、
 私たちはここで、100年前と同じスポットライトを浴びているの。
 天窓から差し込む、100年前と同じ太陽の光。
 ここは、100年分の浪漫が漂う舞台だわ。」

 「なるほど、そういう手もあるか・・・・
 ここは稽古場どころか、
 やりようによっては、俺たち劇団の小舞台にもなると言うわけだ。
 なるほどね、
 名優は、自分の居場所を探すのが早い。
 うん、舞台として充分に使えるかもしれないな」

 座長も目を細めて、さんさんと降り注ぐ北の天窓を見上げています。
時絵が、呆気にとられたままとまどっている茜の肩を抱いて引き寄せます。

 「茜ちゃん、このスポットライトは、
 今度は全部あなただけのものになるのよ。
 この光の下で、黒光が100年ぶりに甦る。
 考えただけでも、ぞくぞくしちゃう・・・・ねぇ茜ちゃん、
 私のつうを上げるから、順平くんが書きあげてくれる
 黒光の役を、私に譲って頂戴。
 駄目?駄目かぁ・・・・そうだわよねぇ、
 残念だなぁ、こんな素敵な舞台なのに。
 ねぇ座長、夜になったら月明かりの下で「夕鶴」を上演しましょうよ。
 絶対に、いままでで一番神秘的なつうが舞い降りてくると思う。
 ここはきっと、最高の舞台になる」

 うっとりとしたままの時絵が、
再び目を閉じると、ゆったりとした所作で日だまりの中を歩き始めます。
その仕草と雰囲気はまるでいつもの舞台で見せる、つう、
そのものの姿です。