「舞台裏の仲間たち」 39~40
「北側の明かり採りの窓からも、
ずいぶんと、明るい光が差し込むのですねぇ。
もう一つの太陽が、北の方でも輝やいているみたいです。
まるで、ホリゾントの光みたい。」
■ホリゾントとは、舞台やスタジオで使われている
背景用の布製の幕、または壁、またそれらを照らす照明の
ことを指します。
通称「ホリ」と呼ばれ、空や空間などを表現します。
本来は、無限の空を表現させるためなどに、良く用いられています。
何気ない時絵の「ホリゾントみたい」というひと言が、
後に大きな意味を、のこぎり工場の舞台にもたらすことになるのです。
しかしこの時に、なにげなくそのひと言を発していた時絵にも
それを漠然と聴いていた順平にも、どこといって特別に気にした様子は
ありません。ただ、漠然と順平の脳裏に「ホリゾント」と言う、
独特の舞台用語の、柔らかい言葉の響きだけが残ります。
作品名:「舞台裏の仲間たち」 39~40 作家名:落合順平