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雪の華~Wintwer Memories~Ⅱ

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 あの二人はこざかしいが、所詮は小者で、そこまでの悪事を働くほどの度胸はない。噂とは怖ろしいもので、特に悪は千里を走るという。悪い噂、それが当人にとって不名誉であればあるほど、その類の噂は火が枯れ野を灼く勢いで広まるものだ。
 美奈子はほんの悪戯心で始めたことが予期せぬ大事を引き起こしたことにショックを受け、怖じ気づいて早退したのだ。道理で、岩田があそこまで怯えていたはずである。輝もよもや、ここまで馬鹿らしい噂になっているとは想像もしていなかったというのが本音だ。
 しかし、噂とはいえ、おろそかにはできない。根も葉もないただの噂が一人歩きを続ければ、いつしかそれがさも真実のように語られ思われるものだ。嘘も千回耳許で囁けば、真実になると言ったのは、誰だっただろうか。
 そこで、輝は昨日の話をかいつまんで話した。紘子はいちいち頷きながら聞いていたが、しまいは呆れたように首を振った。
「別にそんなの、たいしたことじゃないのにね。今日日、皆、色んな目的で記念写真を撮るわ。ましてや、そういう場面に出くわしたら、同じ釜の飯を食べる仲間なら黙って何も見ないふりをするのが当然なのに、面白おかしく幹部に密告するなんて。ホント、許せない奴らだわ」
 紘子がまるで我が事のように憤慨してくれたのは嬉しかった。自分は一人ではないと、敵地に味方を見つけたような想いになれた。
「輝、忠告しておくけど、そういうことなら、人事から呼び出しを受ける前に、あなたの方から自分で説明をしておいた方が良いんじゃない? その写真館のカメラマンって人にも必要なら証人になって貰えば良いわけだし。そうしないと、酷い噂に更に尾ひれがついて噂だけが一人歩きしてしまう。そうなった時、困るのはあなたよ」
 心からの忠告はありがたかった。紘子の顔には、不安そうな表情が浮かんでいる。
「ありがと、そうね。考えてみるわ」
 礼を言い、その場はそれで終わりになった。