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フェル・アルム刻記

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六.

 トゥールマキオの森の大樹の中、自らの居室で、デルネアは二つの“力”がいかばかりのものか、感じ取っていた。
 ハーンが所有するレヒン・ティルル。
 ルードのものとなったガザ・ルイアート。

「我《われ》が予期せぬ巨大な“力”が、この地にあろうとはな……」
 デルネアは言った。
「我《わ》が手に余るやもしれぬが、この“力”を手中に収めるならば、我とフェル・アルムは、確実に永遠のものとなるだろう……。我は神にすら値するようになるのだ!
「我自ら、フェル・アルム北方に赴く必要があるな。……“烈火”とともに」

 “力”を求める者――ディエルにより、ハーンは一時ではあるものの自らが内に秘めた“力”を解き放った。
 それに呼応し、真の“力”を発揮したのは聖剣ガザ・ルイアート。二つの新たな“力”の顕現は、それまで傍観を決め込んでいたデルネア自身を動かすことになったのだ。
 三人目の“力”を求める者――彼の名は〈要〉。
 かくして、デルネアは朝を待たずに森をあとにした。目指すは帝都アヴィザノ。フェル・アルムの歴史上、最大の“神託”を与えるために。





作品名:フェル・アルム刻記 作家名:大気杜弥