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フェル・アルム刻記

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 ひとりごちたその非難の声は、誰の耳にも聞き取れなかった。今の言葉は、フェル・アルムの言語ではなかったからだ。
[姉ちゃん、大丈夫かい?]
 ジルはフェル・アルムの言葉に戻すと、心配そうにサイファに訊いた。サイファはうなだれ、化け物から目を背けたままだ。
[いいよ、姉ちゃん。どんなもんなのか、おいらも分かったからさ、ここから出ようよ!]
 サイファはジルの年齢不相応な気遣いに苦笑しつつ、その場から立ち去った。

 その後の道中で、サイファとジルはすっかりうち解け、アヴィザノ市内で別れた。また会うことを約束して、二人はそれぞれの場所へ戻る。
 サイファはせせらぎの宮へ。
 ジルは、彼の兄の待つ宿屋へ。
 鬱屈した気分晴らしにと、ロステル園まで足を運んだサイファは、そこで出会った少年と息があった。共通点などいくら探しても出てきそうにないその組み合わせは、傍目から見るとさぞ奇妙だったろう。
 これが、ドゥ・ルイエ皇サイファと、双子の少年の片割れジルとの出会いだった。



作品名:フェル・アルム刻記 作家名:大気杜弥