フェル・アルム刻記
ライカは身をずらし、ルードに手綱を預けた。ルードは鞍にまたがると、ケルンと話しこんでいるハーンを見た。ハーンは、ルードの視線に気付いたのか、ケルンに軽く挨拶をすると騎乗した。
[ケルン!]ルードは軒先のケルンに呼びかけた。
[ごめん! みんなによろしく! 帰ってきたら、その時また色々話すから!]
[まったく、いきなりだよなあ……]
ケルンがぼやいた。
[とにかく、ごめんな、こんなに急なことになって。……俺も驚いてるよ]
事態の急変に戸惑いながらも、馬上、手綱を握るルードがケルンに謝る。ハーンがケルンに挨拶をし、馬を進め始めたのを見て、ルードもそれに続いた。あまりの急な旅立ちに実感が湧かないルードとケルンだったが、とりあえず手を振り合って別れた。
ルード一行は丘に沿って道を登っていく。そのうち、大岩に隠れて、親友の姿は見えなくなった。