フェル・アルム刻記
「だからこそ、我に“力”が必要なのだ。二つの大きな“力”……それは、空間の歪みを生み出した者達が持っている。烈火が動いているということを聞きつけば、おそらく彼らは我がもとに来よう。そうだ、全てが無くなる前に早く我がもとに来るがいい。その時こそ我《われ》が“力”を得る、大いなる永遠の始まりの時なのだからな!」
「〈要〉様が全てを平定なさったその頃には、“混沌”により北部は失われているやも分かりませぬが……」
〈隷の長〉は畏まって言った。
「構わぬ」
デルネアはことも無げに言い放った。
「世界が消え去ることに比べたらその程度の損傷など無きに等しい。歴史は創られる。我によってな」
デルネアは言葉を続けた。
「〈隷の長〉よ。この件が片づいたところで、クロンの者達をニーヴルと仕立て上げるとしよう。全ては住民になりすましたニーヴルの仕業である、とすれば丸く収まる」
隷の長は深々と頭を垂れた。
「全ては〈要〉様の掌中に収まるべきなのです」
絶対者としての思惑を胸に秘め、デルネアは烈火とともに北へ向かうのだった。