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昭和の旧車名車とともに 第一部

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マツダ R360 クーペ

マツダの軽四 R360クーペは独特でした。あれで一応四人乗りでしょ?無謀ですよね、大人二人と子供一人がせいぜいでしょう。軽量化のためプラスティック素材を多用し、形も独特で、V型2気筒が収まったリヤゲートについているナンバー灯は今見ても摘まんで回したくなります。1960年製造販売だそうですから、それをリアルで知っているだけで歳が分かるってもんですね。

 私は始めて車に興味を持ち、それが記憶に残ったのは昭和35年頃、私が2B弾で遊んでいる時代の話です。当時高知県南国市御免の駅の官舎で暮らしていました。2軒の真ん中に一つある共同五右衛門風呂を交互に沸かすという、いかにもALWAYSに出てくるような話です。裸電球が一個ついた暗い浴室で親が喧嘩して兄弟で真っ暗いそこへ避難したこともありました。官舎の前は線路に面し狭い道で今は車も通ることが出来ず、官舎は取り壊され時計塔になっています。官舎の板塀の角に松ノ木が一本植わってまして、それが風に揺れてザワザワいうのが波の音に聞こえ、ここは海もないのに潮騒が聞こえる不思議な場所だなんて勘違いもありました。
 当時そこの駅長をしていた父、お隣は当然その部下でしたが、我が家は近所でも一番何も無い家でした。冷蔵庫も炊飯器も駅職員の中では一番遅かったのではないでしょうか。でもその部下のところにこのR360クーペが納車されてきたではありませんか。
少し坂になった玄関先に光る白いクーペ。
「いいなあ・・・隣、車やって」と幼心にうらやましく眺め回したものです。車が自宅にあるといえば医者か商売をしているか、タクシーかの頃ですからそりゃ驚きもしたし羨ましかったです。