おぼろげに輝く
右腕をじっと見つめ「これ、さっき塁が触ってた」と俺に視線を移す。俺は左の袖をもう一度まくり上げ、お母さんに見せたみたいに曽根ちゃんにも見せた。
「お揃いだ。ちなみに、久野夫妻ともお揃いだぞ。嬉しいかどうか分かんねぇけど」
顔を伏せて「すんごい嬉しい」と言ったその声は、笑っている。
彼女の右手を奪うようにぎゅっと掴み、俺は思った事を勢いづかせて口走った。
「曽根ちゃんが消えちゃうんじゃねーかと思ったんだよ。もう俺の前からいなくならないで」
曽根ちゃんはちょっとびっくりしたような顔をして、その顔は少しずつ朱に染まっていった。
「恋が、愛に変わる瞬間」
曽根ちゃんのいきなりの会話の変化について行けず、俺は「何?」と声を上げる。
「こういう時、なのかも」
ツンデレのツン成分は眠りの森に置いてきたのかも知れない。握った手をなかなか離せなくて、お母さんがスライディングでもしそうな勢いで病室に戻ってくるまで、俺は温もりを取り戻した白い手を握っていた。