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「舞台裏の仲間たち」 32~33

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 レイコが見つけてきたのは、26歳になったちひろが、
母の実家のある長野県安曇野で終戦の翌日から書き始めたという日記です。
いわさきちひろが没したのは、1974年。
『草穂』とタイトルがつけられたこのちひろの手帳が、母の実家で
発見されたのは、それから3年後のことです。 
 

 『草穂』は、当時
ちひろが心酔していた宮沢賢治の詩集から名づけられました。

 夜をこめて
 七つ森まできたるとき
 はやあけぞらに草穂うかべり
                     
 宮沢賢治  1917年7月




  ちひろ・[八月十八日] の日記より

 きのうから宮沢賢治の事で夢ごこちだ。
先日から少しばかりはそうであったけれど、いまは
熱病のようになってしまった。
前に詩集をよんだ時、もっともっとよく読んでおけばよかった。

 アカシアの葉がチカチカ輝く八月の高い熱のように
私のこころは燃えている。
年譜を見ただけでなみだぐみ度くなるし、
焼いてしまった法華経の経典がいまはほしくてたまらない。
なくなった湖おばさまのことも忍ばれる。
そしてもう一つ、大事な事がたえまなく私の心に去来する。