復讐のカルテット 事件編
冬用のブレザーに上着を羽織り、はあと息を吐くと白いモヤのような息が口からもれた。
12月の空気はとても冷たい。空気は乾燥し、風が吹くと背筋にぞくりと悪寒が走った。
私立の常磐の森学園は、この界隈では比較的有名な進学校で、生徒の人数もおそらく県内で一番だろう。
卒業生のほとんどは大学進学を希望していて、地元の有名大学を志望するものもいれば、関東や関西の国立大学や有名私大を目指す人も多く、実際に、OBOGの中には県外で働く人も多い。
――妹は、どんな仕事を求めていたのだろうか。
遅刻間際でありながら、常磐の森学園の正門にはまだまだ登校中の生徒が多くいて、青葉夏生はその生徒の群れの中を一人、地面を見つめながら歩いていた。
彼女には同じ誕生日に生まれた、双子の妹がいた。でも、彼女はもういない。去年の二月に死んでしまったからだ。
双子といっても性格は真反対だった。
夏生が優等生のガリ勉タイプだとしたら、妹の真冬は天真爛漫で、誰からも好かれるようなタイプだった。
夏生が髪の毛を黒く地毛のままにしていたのとは対照的に、真冬は中学の頃から金髪に染め上げ、中学三年生の頃には銀色に変色させていた。
――でも、成績は同じだったか。
性格はまるで違うのに。外見も違うのに。彼女と彼女との間には、一目見ればわかるだけの外見的な特徴が多くあった。
でも、考え方の根っこの部分は、同じだったのかもしれない。
もしかしたら、自分も彼女のようになれたのかもしれない、と夏生はたまに思う。
たまたま姉というポジションに生まれたからこのような性格になったのだけで、もし生まれたタイミングが少しでも違えば、自分が真冬になれたのかも。
同じ誕生日に生まれたのに、どうしてこう違うのだろう、と昔からコンプレックスを抱いていた。
でも、いなくなってようやく気づく。
本当は、寂しかったんだ、という事実に。
いなくならないと、わからないんだ。大切なものだったということに。
――そういうのを世の中では、手遅れというんだけど。
夏生は急ぎ足で正門を通り過ぎ、校舎へ入っていった。
作品名:復讐のカルテット 事件編 作家名:カワサキ萌