短編集 1
『Q.どうしてカメラマンになろうと思ったんですか?A.ある写真展を見に行ってから、妹の繭花と僕はカメラの虜になったんですよ。それで、高校の終わりくらいに、僕が運転している車が妹を乗せたまま、交通事故に遭いまして。その時の記憶はすっぽり抜けたように全然覚えてないんですけど。それで、妹の方が重症になってしまって。脚を切断しなければいけなくなったらしく、病室を訪ねた時には既になかったんです。腿の下がごっそり。おかしな話しですよね。運転していた僕が全身骨折で治るのに、妹は二度と戻ってこない障害を授かったんです。迷惑な話。変わってやれるもんなら変わってやりたいくらいだ。脚を失って、人間としてのプライドだって砕かれそうになったはずなのに。何もしらない僕が彼女の部屋に行って、その惨状を目の当たりにした時、彼女笑ったんです。信じられますか?僕のせいで脚を丸ごと失ったのに、彼女は笑って見せたんです。責めずに。その代償が、繭花が行けない場所に行って欲しい、だよ。色々な写真を撮って見せたら、きっと喜ぶだろうなって思って、その写真を届けたんですよ。そしたら、泣いちゃったらしくて。「私はもういいね」なんて言ってのけて、賞に応募したらしくて。で、受賞しちゃったんです。まぁ、入選程度だったんですが…それがきっかけですかね。長々でしたが、これがカメラの道で生きていこうって決意した理由でもあります。Q.今、その妹さんとはどのような関係を築いてますか?A.切っても切れない腐れ縁だったけど、ほんと、その関係が心地よかったって、今改めて思います。一方的でもいいけど、あの頃よりはずっとずっと今の方が強い関係が築けてると思いますよ。彼女にもまた最高の写真を届けますよ、綺麗な花と一緒に。Q.片方だけが高く築いても、倒れちゃいません?(笑)A.大丈夫ですよ。倒れたら、繭花の元へ行けるんだから。』
――――――――――…君が私の片翼となって遠い世界を見てきて欲しいEND(20121103)