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　彼女は、森の中を歩いていた。
　天気のいい夏だというのに、そこだけは薄暗く、そして寒いと感じるほど涼しい。光をほとんど遮ってしまうほど立派な緑が生い茂っていても、それは彼女に闇をもたらすだけ。
　彼女は不安だった。私は本当にこれでいいの？
「どうしたの？」
　青年の声が聞こえた。姿を現したのは、１０代半ばの男性だった。
「こんな所に１人でいるなんて、何かあったの？」
「別に……。」
　彼女は返事を返しながらも、歩き続けた。それでも彼は、彼女の後ろをついてきた。彼女はうっとおしそうに、すっかり伸びた水色の髪をかき上げる。
「さっきから何よ。」
　彼女が木の根元に腰を掛けると、彼はひとつ隣の木の根元に腰掛けた。
「君にひとつ、聞いてみたい事があるんだ。」
　彼は、空を覆う緑を見上げる。
「もし神様がいるとしたら――会ってみたいと思う？」
　どうしてそんな質問をするのだろう。彼女が、神を信じないとでも思っているのだろうか。それとも――
「……会いたい。でも、会いたくない。」
「え？」
　空へ向けた視線を移す。彼が見たものは、俯いてしまった彼女の横顔。