心の中の雨の音(詩集)
黄吊り舟
オレ達は
希望の国へ旅立つ手段として
船を造った
黄色く塗られた船体は
美しく輝いていた
詩人や絵描き
音楽家に役者たち誰もが
この船に乗れば
どこへでも行けると信じた
そして行き先を決めないのが
自由の証だと思っていた
花と緑の自由の楽園目指して
黄色い船は出航した
嵐の日は歌を歌い
凪の日は詩を書いた
恋をし喧嘩もした まだ若かった
子供をつくり 下船するものがいた
花と緑の楽園はどこにでもあったし
同時にどこにも無かった
少しずつ下船するものが増え
すっかり軽くなった黄色い船は
大嵐にもみくちゃにされたあと
何かによって吊り下げられた
花と緑の楽園で
緑の葉に見守られ
黄色い船が吊り下がっている
作品名:心の中の雨の音(詩集) 作家名:伊達梁川