心の中の雨の音（詩集）
そんな生き方
陽の射さない土の中で
ひっそりと花を咲かす植物がある
蝶や蜂はやってこないけど
地表近く咲いたその花に集まる虫がいる
人に賞賛されることもなく
馬鹿にされ こき使われ
生きるために ただ働くだけの毎日
でも花を咲かそう誰とも違う自分の花を
まるで羽を広げた昆虫のように
葉と花で擬態してしまい
フェロモンに似た匂いまで放って
昆虫の雄を待つ花がある
必死に 美しさだけを追い求め
技術と欺瞞を学び 努力もして
一日の大半を そのために過ごす
玉の輿に乗れたなら 黄金の花
雨の少ない砂漠で
わずかな水分で生き延びて
地中深く根を伸ばす植物がある
数メートルに伸びた先に待つのは地下水
ただひたすらに 夢に向かって
何度も壁にぶつかり 乗り越え潜り込み
少しずつ目的に向かって進んで行く
そしていつかは 大きい葉と大輪の花を
そんな生き方もある
作品名：心の中の雨の音（詩集） 作家名：伊達梁川