男性支配
【註:明日香さんは架空の人物です。】
朝日が玄関の15号の静物画を明るく照らして、すてきです。
メル友になってもう5年になるね。長崎から旭川は遠いから、これからも会うことはないけれど、時々あなたがすぐ隣にいるような気がします。
わたしにとっては、E−メール、というものが発明されて本当によかった(このシステムがなかったら、わたしは今よりももっと、つらくさびしい生き方だった)。あなたとも出会えたし。
普通、言えないことが、メル友には言えるのです。あ、もちろん、そのまま受け止めてくれる相手なら、ということですが。
今ではわたしは、誰だか分からない相手にあてた文章が書けなくなってしまった。
もちろん、ひとはさまざまで、わたしはこれまで20人ぐらいのメル友とメール交換を楽しんできたけれど、突然、「何でこんなことを言うんだろう、わたしのことはほっておいてくれ」と、わたしからやめたこともあるし、話すことがなくなって自然消滅したり、逆に私の方が相手を好きになってしまって、「あなたが好きです」と書いたとたんに音信不通になったり。結局今はわずかのメル友しかいないけれど。
でもね、少し深い話をするのは相手が女性の場合だけなのです。男性同士で「おまえ、なにいってんだよ。ばかだろ。いつか飲もうぜ。」と軽口をたたき合うのも、それはそれで楽しんでいますが。
なぜ女なのか。それはもちろん、わたしが女好きで性欲満々のエロオヤジだからなのだけれど、それとは別に、もう一つ理由があるような気がします。
男は人前で泣くものじゃない、と育てられました。たぶん、男はみんなそうだと思う。女に許されることが男には禁じられている。つらいこと、悲しいことは胸にしまっておけ、って。
でもね、見つからないように胸の奥にしまっておくと、そのうち、自分でもどこにあるか、どんな形をしているのか、わからなくなるの。いらいらしても、その理由さえわからなくなるの。それで弱いものをいじめたりしてしまうの。
なぜ、男は、泣いちゃいけないのか。さびしいとき、「さびしい」って言えないのか。「男は強くなければならない。女を守らなくてはならない。」ってどうして毎日言われるのか。