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「舞台裏の仲間たち」 25~26

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 「そうだね。
 それにしても、眠くはないのかい。
 昨夜は遅くまでおばあちゃんと、
 ずいぶんと話し込んでいたみたいだもの。
 馬が合うというか、
 まるで、昔からの親子ようだと、
 おじいちゃんさえ感心していたよ。」


 「うん・・・
 群馬に帰ったら、お父さんに会いに行こうかな。
 二人しかいない娘が、ちっとも実家に寄りつかないんだもの、
 一人でさびしい思いをしているような気がしてきた。
 アパートを引き払って、少しの間だけでも、
 お父さんと一緒に暮らそうかと、
 そんな風に思い始めちゃった・・・」


 「少しの間だけ?。」


 「うん、誰かさんが
 お嫁さんにもらってくれるまでの
 限定つきだけど。
 もしかしたら、一生そのまま実家かもしれないけど、
 それでもいいから、お父さんの居る
 実家に戻りたくなっちゃった。」


 「うん、それもいいのかもしれない。」


 「もらいに…来てくれる?。」


 「君さえよければね。
 実は今朝・・・
 おばあちゃんに、こっそりと耳打ちをされたんだ。
 焦ってはいけません、とね。
 茜ちゃんが、自分の力で溝を飛び越えるまで、
 辛抱強く待つようにと・・・
 くれぐれもと、念を押されたよ。
 良いおばあちゃんだったね、
 安曇野まで来た甲斐が、充分にあった。
 来てよかった。」


 「ねぇ、わたし、
 どうしても黒光を演じてみたいと思った。
 なんでだろう・・・
 私自身のけじめをつける意味で、黒光が私を呼んでいるような気がするの。
 でもそんな脚本は、たぶんどこにも無いし、
 実現できる可能性なんてほとんど無いと思うけど。
 だれか、脚本を書けるヒトがいないかな。
 あたしに才能があれば、昨夜のうちに
 一気に書きあげたのに。」



 茜が珍しい事を言い始めました。
舞台でも、主役に名乗りを上げたことなどは
一度たりともなかった女の子です。
どんな役でも不平を言わず、裏方もすすんで引き受けてきた茜が
突然、主役を演じたいと言い始めました。
なにか吹っきるための、大きな心境の変化を感じさせます。