「舞台裏の仲間たち」 22~24
幹を通り四方八方に向かって枝を通して伸びていく
その姿の中に静中の動がある、と説明をしました。
その動勢(どうせい)を彫塑や、絵画などの内側に作り出していくためには
作家自身の洞察力と、造形に対する深い想(おも)いが必要となり、
そしてなによりも技術が問われると強調をしました
碌山がロダンの彫刻に見つけた「動中の静」を共感したければ、
風に揺れ動く木を見ればよいと言いだしました。
木は荒ぶる風に翻弄(ほんろう)されているように見える、と語ります。
だが幹は、内なる螺旋(らせん)構造を解いたり締めたりして
風を受け流し、軸は揺るぐことのない動中の静を保っている、
と説明をしてくれました。
う~ん、なるほど、共感をしてしまいました。
たしかに、碌山の絶作にあたる【女】には、
複雑な構成であるのにも関わらず、内部構造は自然の理にかなっていて、
天空に向うその動勢ぶりを見事に表現をしていました。
また、【女】を右横から眺めてみると、膝から上の姿勢が
スキージャンプで力を溜めて、踏み切る瞬間の姿と重なっていています。
まさに、静中の動のひとつの典型を示しています。
一方で、膝下を前後させて、
胴体へと至る螺旋の動きを作ることで、動中の静をつかさどり、
大地から天空へと伸びていく軸の存在を予見させていました。
明治に生まれたこの彫刻、【女】は、
西洋と日本人独特の見方をすりあわせたという彫塑の将来性を
垣間見せてくれた、一大傑作だと強調をした後で
「男女のことも、また似たようなものである。」と、おじいちゃんが、
勝手に話を締めくくってしまいました。
結局、静と動に関してはよく理解は出来ましたが
男女の「情」については、見事にはぐらかされてしまいました・・・
やはり自分で「見つけろ」ということなんだと思います。
作品名:「舞台裏の仲間たち」 22~24 作家名:落合順平