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「舞台裏の仲間たち」 19~21

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 なぜこの「女」は、
ひざまずき、身体を稔転させて顔を宙に向けているのだろう・・・
その答えを探すかのように、茜もまた「女」と
同じように、つられた形で顔を上空へと向けました。

 「今度は、ずいぶんと、
 碌山が、お気に入りのようですね。
 今朝のお嬢ちゃん・・・」


 茜の背後に現れたのは、
今朝、わさび田で会ったばかりの初老のご婦人でした。
その後ろには人のよさそうな、浅黒い肌をした白髪のご主人が
同じように、ニコニコと後ろ手を組んで立っていました。

 「あ、今朝ほどは、ごちそうさまでした・・・。」

 「私も、碌山の大ファンなの。
 すこし時間があると、こうしてここへ来て
 おじいちゃんと二人で、のんびりと時を過ごしています。
 まァ、今日はたまたま別の用事がありまして、
 偶然、ここの前を通りかかりましたら、
 なにやら、今朝、お見かけした群馬ナンバーを、
 おじいちゃんが見つけました。
 もしかしたら、またあのチャーミングなお嬢ちゃんに
 会えるかもしれない、などと、うちのが言うものですから・・・
 無駄足でもいいからと、とりあえず、
 私たちも碌山に、会いに来ました。」


 「チャーミングだなんて、そんなぁ・・・」


 まんざらでもなさそうな茜が
あわてて、私の背中に隠れてしまいました。


 「そう言うところが、チャーミングなの。
 ねぇ、お嬢ちゃん、
 この、ブロンズ像が
 あなたには、どんな風に見えていましたか?
 よかったら、私に教えてください。」


 茜が一歩前に出てきました。


 「最初は、
 悲しんでいる人なんだと思いました。
 なにか辛いことがたくさんあって、
 その悲しみのあまりに、
 身体をよじって、嘆いているように見えたのですが・・」


 「ですが?・・・それから。」


 「顔の表情というか、
 全身の雰囲気の中に、おぞましいものと
 崇貴なものが同居していて、
 なんともいえない、どろっとしたものを感じました。
 とても素敵で綺麗な一面と、
 どうにもならない情念と言うか、
 宿命みたいなものを感じてしまいました。
 これって・・・
 わたしの感想は、変ですか?。」