「舞台裏の仲間たち」 16~18
松本駅を出発した大糸線は
篠ノ井線としばらく並走を続けてから、やがて国道19号をくぐり
その先で鉄路が左右に分離をします。
そこから先は大きく左へ弧を描き、国道147号と並走をしながら
梓川を渡り、やがて安曇野へと入ります。
梓橋駅(あずさばしえき)のホームには
「是より北 安曇野」と書かれた、大きな木製の看板が設置されていました。
地元の有志・「梓橋りんご倶楽部」の人たちが愛情こめて
手入れをしている、ホームのリンゴ並木も見て取れました。
梓橋駅を過ぎた大糸線は、
また右へ大きく弧を描きながら、そのまま松本平を北上します。
西側には北アルプスを望み、沿線には安曇野の水田が
どこまでも延々と続きます。
この辺まで来ると、
やがて「信州富士」と呼ばれている有明山が大きく現れてきます。
その独特の台形をした山容が、富士山に似ていることから
有明富士(信濃富士・安曇富士)などとも呼ばれている
郷土富士のひとつです。
この山には森林限界帯が無いために、冬場でも
山全体が雪に覆われることは少なく、黒い山容を剥き出しにするために、
それが北アルプスの景観を邪魔しているなどとも言われています。
それがまた逆に、有明山の存在を際立たせる結果にもなっていました。
山頂部は、北岳・中岳・南岳の3つのピークからできています。
新生代に隆起して形成された山であり、最高点の北峰には、
観測用の二等三角点が設置をされています。
山体は黒雲母花崗岩で出来ていて風化が進み、急峻な地形で
滝や奇石・巨石などがたくさん見られます。
茜と二人で、北アルプスの名鋒たちの夜明けをしっかりと
見届けてから進路を碌山美術館に向けました。
小さな橋を一つ越えようとした時、助手席から外の景色をながめていた
茜が急に大きな歓声を上げました。
作品名:「舞台裏の仲間たち」 16~18 作家名:落合順平