「舞台裏の仲間たち」 16~18
「あ、それからうひとつ。
あなたの着替え分も、ちゃんと準備をして持ってきました。
でも、心配をしないでくださいね。
全部、新品です。
前の男の着た服なんか、全部ズタズタに切り裂いて、
綺麗さっぱり、ゴミ箱へ投げ捨ててしまいました。
だからあなたは、何の心配もしないでね。
2泊や3泊なら、どうってことがないほどに、
たくさん詰め込んでおきました。」
「おいおい、それって、
突然、休暇をとれっていう話かい。」
「よく有る事でしょう。
突然、風邪をひいたり、
お腹を壊して、寝込むことだったら日常茶飯事です。
口実なら、いくらでも用意できるでしょう、
ようするに上手に、ずる休みをする根性が有るか、
無いかだけの話だわ。」
「ずる休み?」
「人はそれを、
突発性の、有給休暇ともいうわねぇ~。
ねぇ石川さん。
・・・
まじめすぎる性格であることは、良く知っているけれど、
時には、休むことも大切だわ。
あなたって、ほとんど有給休暇もとらずに働き通しでしょう、
それじゃぁ身体にもよくないわ。
悪く言えば、ずる休みということになるけど、
働き過ぎも、良くないわねぇ。」
「働き過ぎか・・・
それにしたって、2泊か3泊というのは、
いきなりに、過激だね。」
「よく言うわね~
ついこの間のドライブだって、結局2泊3日になったくせにして。
もっとも、何が気にいらなったのか、
あなたったら、茜の手の一つさえ握ってくれないんだもの、
私、そればっかりが心残りになっちゃった。」
「でもさぁ、
潮風の中では、身体を温めてあげたし、
それに・・・。」
「ば~か、
なりゆきの話じゃなくて。
あなたから、来てくれたかどうかの、話なのよ。
女は、いつも其れを待っているの・・・」
「ン、何か言ったか?」
「別に!。」
車は快調なエンジン音を響かせて、
国道18号を北上しました。
軽井沢を過ぎて、上田市の手前から国道を左へそれて、
諏訪湖方面へとすすむ山道に向かい始めました。
曲がりくねった山道が続くこの街道の方が、時間調節もかねた、
すこしだけの、遠回りの道になるはずでした。
(17)へつづく
作品名:「舞台裏の仲間たち」 16~18 作家名:落合順平