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「舞台裏の仲間たち」 16~18

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 「わぁ、素敵!。」

 また茜が歓声を上げました。


 蔦の絡まる教会風でレンガ造りの建物は、
安曇野を代表する風景として、ガイドブックなどで
誰もが一度は目にしたことがあると思います。


 とんがり帽子の美術館の本館には、
碌山の彫刻や絵画、書簡などが静寂の中に陳列されています。
31歳でこの世を去った、天才芸術家の魅力を後世に伝えるために
昭和33年4月に、29万9100余人の寄付によって、
碌山の生誕地である北アルプスの麓、安曇野に誕生したのが、
この碌山美術館です。


 中でも碌山が最後に残した最大の傑作といわれている、
「女」には、見るものを魅了する迫力と
優美さがあると評判です。


 第2展示室と第3展示室には、
高村光太郎や中原悌二郎、戸張孤雁といった碌山と親交のあった
彫刻家達の作品などが展示をされていて、日本彫刻界の
近代までの流れを垣間見ることができました。



 建物の外にあるベンチや樹木なども、
それ自体がひとつのモニュメントとして配置されていて
四季折々の表情を、その都度見せてくれました。
安曇野を代表する風景として、一度は訪れておきた場所の
ひとつのようです。


 碌山が21歳の時に洗礼を受け
キリスト教信者となった関係からでしょうか、
碌山美術館の建物の外観はもちろんのこと、その内部の雰囲気も、
静謐で神聖な教会の礼拝堂を摸していました。
展示室は、さほど広くなく、一部屋に、
碌山のほぼ全ての作品、14点が収められています。


 碌山の作品の中で、「北条虎吉像」と「女」は、
現在、国の重要文化財に指定されています。
「女」はあまりにも有名ですが、「北条虎吉像」も、
まるで生きているかな存在感があります。
その胴色の皮膚の下には 温かい血が流れているのではないかと
錯覚するほどでした。

 近代彫刻の中で、
重要文化財として選ばれているのは4点のみで、
そのうちの2点が、荻原守衛の作品であるということを考えると、
碌山の作品の持つ高い芸術性とその価値がよく分かります。
茜が、「女」の前で、かたまってしまいました。


(19)へ、つづく