テポドンの危機1、続
うすくらい部屋に一人の男が呼ばれていた。
「No,not again.今度もだめでした。」
「そうか、また別の方法を考えなければな、MR.President」
男の名は明かされず、Mr.Xと呼ばれていた。彼の素顔は誰も見たことがない。
「Yes,sir.」
「Don‘t worry.We have another plan.」
黒いカーテン越に、Mr.Xが答えた。
3月XX日 エピローグ・沖縄の海
夕焼け
赤く染まり行く夕日の中に、一人の男の姿があった。首に巻いたプロテクター姿は、紛れも無い洋平だった。片腕を三角巾で釣りながら、遠い海の向うを眺めていた。後ろから、一人の女性が近付いた。そっと肩に触れることも無く、声を掛けたのは妻、順子だった。
「洋平。もう危ないことはしないでね。私、心配で命が縮んでしまうわ。」
そういう声に洋平は思わず、頷いた。と同時に再びプロテクターの奥の傷が痛んだ。
「いたたー…」
思わず首基を押さえる洋平。彼の脳裏に始めて妻とここに旅した日、自転車で転倒した姿が思い浮かんだ。
太平洋に沈む夕日は、雄大で美しかった。まるですべての人の悲しみを覆い尽くしてしまうかの様だった。
第二幕に続く。
作品名:テポドンの危機1、続 作家名:Yo Kimura