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waiting for sunset 浦里の村

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 目を覚まし、昨夜の事が気になり、まだ寝ている男に声をかけた。返事がない。ただ静かに横たわっていた。息をしているようにも見えるし、駄目なようにも見えた。

 私は大きな声で、看守を呼んだ。繰り返し声をあげていると、やっと気付いた看守が、大きな足音させ、駆けつけてきた。私は男の牢を指さし、様子がおかしい事を伝えた。すこしばかりの日本語しかわからないらしく、話が上手く伝わらない。気付いたら、横たわった男へ向かって、叫んでいた。

 「起きろ。起きろ。起きろ。」

 そうすると、ようやく男の異変に気づいたらしく、鍵を開けて、男の牢に入ると身体を揺すった。

 男はぐったりした様子で動かない。看守がもう一人を呼んで、引き摺るように男を連れて行った。


   男は二度と帰ってこなかった。

 誰もいない向かいの牢は開け放しになっている。いつ戻ってきても違和感がないぐらい中は変わりなく、風窓の下には椅子が置かれている。また一人での生活が始まった。当初はすぐ帰ってくると思ったが、再び会う事はなかった。

 ある日、看守がきた。牢の鍵をあけて、外に出るように促してくる。とうとうその日が来たと思った。覚悟は出来ていたが、やはり出るのにためらった。最後に海を見ようと思った。

 しぶしぶ立ちあがり、牢をでると、看守が先に歩きだした。私はその瞬間、勢いよく向かいの牢に入り、椅子を蹴って、風窓を覗いた。


  外は少しの空と迫った黒い壁が見えるだけだった。

 

 私は話を聞き終わり、「そんな状況だと誰でも似た感じになるんじゃないですか」と言った。正直な気持ちは、何と声をかけていいのか分からなかったのだ。

 今もよく分からないが、だるま夕日が綺麗に映ったら、老主人の宿に写真を送ろうと思った。