エイユウの話 ~秋~
それが彼らをかき乱した・1
サートンが終わり、季節は秋を迎えていた。中庭の広葉樹はそれっぽく色づき、風が吹けばかさかさと歌っている。空気は夏よりも乾燥して、この間までの暑さはすごすごと退散した。晴れ晴れとした天気が続き、今年は特に急に天候が変わるということも少ないようだ。
秋に入って一カ月。それは夏休みが終えてから、だいぶたった頃である。魔法学院といっても勉強ばかりでは、あまりにも堅苦しい。そんなわけで、運動会は無くとも秋祭りという学院祭は存在していた。
そして今の時期こそ、その秋祭りの準備期間中なのである。
「このままでいいのかよ」
秋祭りで経営する屋台の準備中に、明(みん)の術師であるキサカ・ヌアンサは眉間にしわを寄せて、緑(りょく)の術師である友人に尋ねた。ずいぶんと不満がうかがえる言い方だ。
出し物の目的は、専攻交流と言える。そのため、数十個の出し物の中から、好きなものを選べるように出来ていた。だからこそ、違う専攻の生徒である二人が、同じ作業に没頭しているのである。ちなみに今は、座りこんで配布する箱を製作しているところだ。そのため足もとには無数の紙が広がっている。
正座で作業をしていたキートワース・ケルティアは、まるで気にしないようにけらりと笑った。
作品名:エイユウの話 ~秋~ 作家名:神田 諷