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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
novelistID. 43462
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After Tragedy1~プロローグ~

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プロローグ2-1


「デメテル、遅いよ!」
 あらゆる魔法を生み出した風の精霊レーニス・フェアリースと生まれながらに囚人であった人間シー・ウインドスの間に生まれたキュオネ・フェアリースは今日も元気に笑っている。明るい日差しの中、彼女は草木で囲まれた1本道を勢いよく走る。彼女が走るたびに彼女の手の中にあるレンゲの花束から花びらが舞った。その姿をやれやれといった顔つきで、彼女の母親の育ての親であったデメテルは眺めた。

キュオネは、彼女の父親が母親を殺した悪夢のような14年前の出来事とは無縁といった様子で、はつらつとしていた。

(よかった。彼女は元気に笑っている。)
デメテルは、そんなキュオネの様子に顔を綻ばせた。
(私がキュオネを育てなくてよかった。)
デメテルは、やや後ろ向きな思考回路の持ち主だったので、レーニスの死は、半分は自分に責任があると感じていた。

審判の神であるデメテルが生命力の希薄な風の精霊レーニス・フェアリースを連れて帰って育てたのには、少なからず、自分が過去に裁いた者に対する罪滅ぼしという動機があった。彼女は後ろ向きな態度でレーニスを育てたから、レーニスが生きるか死ぬかのぎりぎりの時に死を選んでしまったのでは無いかと悲しいくらいに信じ込んでしまっていた。

だから、彼女は愛娘のようなレーニスが亡くなった時に、その子供を育てなかった。