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心機一転

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私の会社では、月初に定例朝礼が行われる。
その時に 指名を受けたものは目標や心構えを発表することになっている。
おそらく、今回私は指名されるだろうと、昨夜から言葉を用意していた。
何故指名されるかって?
明日の定例朝礼は、先月の決算を終え、今期最初にあたる。
私は、前期の目標達成、第二位となった。
上位五名と最下位となった者がその指名を受けることが何となく決まっていた。
以上のことから、そのような心構えで今日をむかえたのだ。
ちなみに 前期一位のあいつは、その前年もトップだった。
そうだ、あいつだ。先輩でも後輩でもない。
同じ場で面接を受け、爽やかな笑顔で軽く面接官の良い心証を得て、その場で確定を貰ったかのような同期入社の男だ。
 翌日、ホールに集まった社員の前で、やはり発表することになった。
まずは、最下位だった末松さん。私の二年先輩にあたる方だ。
 新入社員の私に実務を丁寧で分かり易く説明され、早く仕事を知ることができた。
(きっと、この人は、できる社員なのだろう)と思ったほどだ。
だが今は、できるとは、実に曖昧な表現だと感じている。
有能だとか、要領が良い、人当たりが良い、粘り強い、工夫がある……どの面がそれに適しているかにもよるのだろう。
彼の丁寧さは、資料や書類には生かされていたが、営業での立ち回りは押しが弱かったとしか思えない。その結果のような成績だった。
しかしながら、発表の言葉は、何かが満ち溢れるようで素晴らしく、態度も決して卑下など感じられない。うかうかしていると、すぐに逆転されそうな そんな感じすら受けた。
 次は、前期一位のあいつ、市村だ。
先輩たちを前にしても、動じない爽やかな笑顔で話す。
(こういう面は、羨ましい)
ただ、前に発表の末松さんの言葉が耳に残り、印象的な言葉はなかったように思えたが、やはり、二年連続のトップの所為だろうか、自信を沸々と感じさせる話し方と周りの期待の雰囲気に包まれていた。
女子社員の何となく見つめる眼差しを(羨ましい)と感じるのは、醜い嫉妬だろうか。
たたえる拍手まであった。そんな次はやりにくい。
作品名:心機一転 作家名:甜茶