時は動き出した
「はい、そうします。旦那との関係も少し、考えてみようと思います」
「そうだね、まだ若いんだから。幾らでも修正はきくんだからね」
彼女に後押しされる形で、私は少し前に進めた気がした。
「相沢さんに相談してよかったです」
少し時間をかけて食べたパスタのお皿を、相沢さんのお皿と重ね、お盆を持った。
「私の方が長く生きてるんだから、何かあったら今日みたいに遠慮せず相談してよ」
母の様に微笑む相沢さんに、私も微笑み返した。午前中は少しどんよりしていた空も、心なしか青い部分が増えていて、相沢さんと別れた駅前で私は、大げさに深呼吸をした。街の雑踏の汚い空気だけれど、身体の中に淀んでいた気持ちの方がよっぽど汚れていると思うと、深呼吸でそれらを吐き出してしまいたかった。