勇者と魔王の話
むかーし、むかし。時を越え、人々の間に語り継がれる昔の話でございます。
恵み豊かな緑の国に、勇者とも魔王とも呼ばれた若者が住んでおりました。
北の国の人々は伝えます。彼の者は神の騎士に討ち取られし残虐非道な魔王であったと。
緑の国の人々は語ります。彼の者は国を救った偉大なる勇者であり、すべてを失い戦いに破れた悲しき勇者であると。
若者は果たして勇者だったのでしょうか。それとも魔王だったのでしょうか。
それは今となっては誰にも分からないことでありましょう。
ただ一つ確かなのは、若者はただ、自分の大切なものを護りたかったのだということだけでございます。
これは勇者と魔王の話。
いつのことかは分からずとも決して忘れてはならない昔の話でございます。