篠原 逆転
そこで、僕は少し楽しいことを思いついた。こんなことを言うとは思われていないだろうから、妻は驚くはずだ。
「じゃあね、明日の午後まで雪乃は全裸で過ごすって、どう? 」
「ええっ?」
「もちろん、僕は服を着て過ごすけどね。」
「もしもし? 義行さん? 」
「くくくくく・・・・だって、いつも、雪乃は上は着たままで、僕だけ全裸に剥くよね? あれって不公平だと思うんだけどなあ。それに主導権はくれないし? 」
「あれは・・・あなたは知らないから、私が。」
「うん、最初は知らなかったけどね。もう、随分と学習させていただいたので、どうにかなると思いますよ? 奥様。」
僕は知識がなかった。だから、妻が主導権を握っていたのだが、もう、あれから時間は随分と経過している。たまには、僕が抱いてもいいだろうと思った。たまには、抱かれてくれないだろうか、と、思っていたので、この機会を活用することにした。妻は、僕の言葉に、顔を真っ赤にした。
「だっ、だって・・・あの・・・でも・・・私・・・」
「うん、何もしないで僕にさせてくれると嬉しいな? 最高のプレゼントだ。」
「・・・えっ・・・えっと。義行さん。あのね。」
「どうして、そんなに照れるの? なんか初々しいな。あはははは。」
僕らは心と身体が成長するのに、とても時間がかかる種族だ。だから、僕は何も知らなかった。妻が、それを一から教えてくれたので、逆転するとなると動揺するらしい。ようやく、僕も妻を抱きたいと思うようになったのだ。
「僕の時は有無を言わさずだったよね? 雪乃? 」
「それは・・・あなたが・・・」
「もちろん、随分待たせたとは思うけど。だから、僕に抱かれてくれない? 雪乃に好きなように触れてみたい。」
「大丈夫なの? 」
「大丈夫だよ。義母さんからも、成人のお墨付きは、前に帰った時に貰ったんだ。」
「ええ、それは聞いてるわ。でも、あなた、あんまり興味がないみたいだったから。」
「僕が言う前に、雪乃が誘ってくれるから。」
「そうなの? 」
「そうです。・・・・で、返事は? 奥様。」
「・・・・喜んで・・・・」
消え入りそうな声で耳まで真っ赤になった妻は俯いたまま答えた。そういうことなら、全は急げだ。対面の椅子に座っている妻を抱き上げて寝室に入る。今まで一番嬉しいプレゼントかもしれない。