DESTINY BREAKER 一章 3
人間(たべもの)は歩いてくる。
大きな塊は醜く口元を歪めた。
人間(たべもの)は自ら塊(えさ)になるために近づいてくる。
愚かな、実に愚かな。
まもなく自分も小さな塊になることを知らずに。
新たなパズルピースが出来上がる。絶対に完成することのないパズルのピースが出来上がる。
高校から離れた竜牙町への帰路を桜花は自転車が雪で凍ってしまった路面で転倒しないようにゆっくりと走っていた。
普通、一般の生徒は通学に電車やバスを利用するのだが、お金が掛かってしまうからという理由で桜花は、自転車でほぼ毎日片道一時間半ほどある道のりを往復している。それに加えて夕ご飯の買い物などもしていくので相当の運動量になるのだが、登下校の際に移り変わる季節の風景をのんびりと見ることが楽しみで桜花にとってこの程度の距離は苦ではなかった。正直なところこの風景が好きだからこそ自転車通学をしているというのが本音である。
「っと!やっぱり降りたほうがいいか・・・。」
少しバランスを崩し、さすがに路面がこの状態だといつか転びかねないと考え桜花は自転車を押して歩いて帰ることにした。
「このままだと結局帰りは夜になっちゃうかなぁ。」
買い物自体は早く終わったが、いまだ家までの道のりは半分も過ぎていない。冬の日の入りは早く、帰宅する頃には完全に夜になっていることは明白であった。
「いつもより早めに帰れると思ったんだけどなあ。」
だけど、転んで怪我をするよりましだろう。
まあ、しょうがないかと桜花は歩を進めた。
「それにしても。」
桜花は雪の降り注ぐ天を仰いだ
「相変わらず百発百中か・・・。」
再び視線を前に向け、今日の出来事を思い出した。
きこえてきた唄
幼い頃からきこえている未来を告げる唄
それが現実として起きている今
桜花にとっては不思議なことではなかった。
『驚く』という感情が芽生えるより先に『慣れ』てしまっていたのだから。
あのときもそうだった。
幼かった頃の記憶。
私を変えたあの出来事。
作品名:DESTINY BREAKER 一章 3 作家名:翡翠翠